Book Review!


作者:福盛 貴弘


レビュー: 基礎からの日本語音声学 (単行本)

音声学を初めて学ぶ人向けの入門書。今どきの大学生のレベルを反映しているのだろうか、各章冒頭に能天気な学生と著者との対話が導入部として使われているが、こういう形での手ほどきを好まない読者もいるだろう。本文の記述はしっかりしている(ただし、時々、音声学とはあまり関係のない薀蓄話が入ってくるが)ので、この対話部分が浮いてしまっている感じである。

日本語音声学と銘打っているにもかかわらず、個々の音声の具体的な調音の仕方にほとんど触れていないのが難点。特に、「日本語の音声」と題された最後の三つの章は、ほとんど説明のなかったIPA表記による日本語音声やアクセントの話が、入門書らしからぬ密度の濃さで展開するので、気楽に前半部を読んできた読者は面食らうはず。おそら??!
?は、この本をテキストにして教室で教師が説明するということを前提として書かれているのであろう。そのため、この本だけで日本語音声学を自習することは難しい。自習するためには斎藤純男『日本語音声学入門』(三省堂)あたりを併せて読む必要がある。

とは言え、調音音声学のみならず、音響音声学・聴覚音声学についても、その基本的なところが噛んで含めるように説明されており、初学者が読むに値する一冊である。


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