Book Review!


作者:森田 良行


レビュー: 助詞・助動詞の辞典 (単行本)

助詞、助動詞という極めて扱いにくい対象を捉えて辞書を作るというのは大変なことだと思う。まずその努力に敬意を表したい。しかし、やはりこういう類の言葉はどうしても著者の言語感覚が頼りになるため、読者側との乖離が起きやすい。「祖母は父を好きではなかった」などの「〜を」の例文が「規範的な『が』の方がのぞましい」と断定されると、これらの文章の動詞が殆ど好悪の動詞なことを考えても「を」でいいんじゃないかという気になる(p.242)。また「猿も木から落ちる」の「も」は、著者の言うような「猿一般について木から落ちることもあることの全面的肯定」などという意味ではなく、「猿のように木登りが巧みなものであってさえも木から落ちることがある」という意味だ。同様の例として「弘法も筆の誤!
り」が挙げてあるが、「弘法大師一般」などというものがあり得ないことからもこの分類は成立しがたい(p.182)。通読してゆくと彼方此方でひっかかってしまうのだが、これらも言ってみれば問題提起として考えるべきだろう。これを教条的な規範とするのでなく、考えるための手がかりとすれば、非常に面白く又役に立つ本であることは間違いない。


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