Book Review!


作者:土屋 剛俊

レビュー:
レビュー対象商品: 日本のソブリンリスク―国債デフォルトリスクと投資戦略 (単行本)

日本の財政状況が悪化し続ける中で買われ続ける日本国債。こうした状況は、潤沢な国内貯蓄が政府部門の赤字をファイナンスして余りあるため、と説明されることが多いが、それ以上に踏み込んだ議論はそれ程多くない。本書は正攻法でこの問題を深く掘り下げ、この問題を考える上で適切な視座を提供する。

本書の結論は極めてシンプルだ。著者は、日本国債を支えているのは、1)企業部門の余剰資金と、2)デフレを背景とした実質金利の高止まりが銀行預金に資金を惹きつけていることであり、これらのサポート要因が剥落すれば、日本国債金利が上昇し始める可能性が高いと指摘する。上記1)に関しては、1400兆円の個人預金が資金の出所とされることが多いが、日本国債の買い手を考える上ではストックよりもフ!
ローに着目すべきであり、ストックの水準は維持されていても、フロー・ベースでは個人預金の増加基調はかなり以前から停滞しており、国債購入の新規資金の出所としての重要性は低下しているとの指摘には説得力があった。また、ソブリン・デフォルトの歴史を総括した箇所も参考になる。

以上の分析を踏まえ、著者は日本の財政と日本国債の先行きに関して、様々なシナリオを提示する。こうしたシナリオをここまで具体的に示した例はあまり無く、関連議論の「叩き台」になれば、との著者の目的は十二分に達せられているように思える。惜しむらくは、1〜4章までと5〜6章の繋がりがやや悪い点か。


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