Book Review!


作者:グスタフ・マイリンク

レビュー:レビュー対象商品: ナペルス枢機卿 (バベルの図書館 12) (単行本)

 ボルヘスが編纂しイタリアのフランコ・マリーア・リッチ社から刊行された全30巻の文学全集が『バベルの図書館』である。各巻にはボルヘスによる序文が付されている。しかし、まず目を引くのはその外観である。本の形はかなり縦長で箱入り、そして瀟洒という言葉がぴたりと当てはまる装丁。本というメディアの魅力をいかんなく発揮している。特にこの第12巻は表紙が本文の何よりの導入となっている感すらある。
 さて、本巻はグスタフ・マイリンクの短編集で、「J.H.オーベライト、時間‐蛭を訪ねる」「ナペルス枢機卿」「月の四兄弟」の3作が収められている。短編とは言え、その魔術的な魅力において「ゴーレム」「緑の顔」「西の窓の天使」等の長編(これらは幾分冗長であるかもしれない)に劣ることはなく、!
むしろマイリンクの議論をじっくりと追う余裕ができる。特に「月の四兄弟」は興味深い。そこでは地上での認識や制作を可能ならしめるものとして月が論じられるが、それはまた機械を、したがってマイリンクが体験した第一次世界大戦という人の手になる怒りの日をも現実化させるものである。驚くべきは、第一次大戦を持ち出すことによって魔術的な作風が乱されるということが全くないことだ。それは微動だにすることなく、代わりに禍々しさを得るのである。


詳細を確認してみませんか? → 

ブログランキング → http://blog.with2.net/link.php?1342232